专利摘要:
固体粒子が埋め込まれたクラックのネットワークを備えた構造化クロム固体粒子層について説明する。該構造化クロム固体粒子層において、クラック密度は10〜250/mmであり、固体粒子層の粒径が0.01〜10μmの範囲であり、層全体における固体粒子の割合が1〜30体積%であり、クロム固体粒子層が層の表面に凹部を備えた微細構造を有し、前記凹部が占める表面積の割合が5〜80%である。構造化クロム固体粒子層の生産方法についても説明する。
公开号:JP2011516726A
申请号:JP2011502245
申请日:2009-01-22
公开日:2011-05-26
发明作者:デュルドート、シュテファン;リンデ、ルドルフ
申请人:フェデラル−モーグル ブルシャイト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング;
IPC主号:C25D3-04
专利说明:

[0001] 本発明は、微細構造と、クラックのネットワークとを備え、該クラックのネットワークに固体粒子が埋め込まれている構造化クロム固体粒子層に関する。本発明はまた、かかる構造化クロム固体粒子層の生産方法と、かかる構造化クロム固体粒子層でコーティングされた機械要素とにも関する。]
背景技術

[0002] 摩擦および高温に曝される機械要素、例えばピストンリングは、耐腐食性、耐摩耗性、耐焼付性、および耐焼焦(スコーチ)性の表面を有しなければならず、かつ優れた滑り特性を有しなければならない。このため、機械要素、特にかかる機械要素の接触面は、電気分解により堆積される硬質クロム層の形をした摩耗保護膜でコーティングされる場合がある。]
[0003] 耐摩耗性および耐焼付性を改善するために、電気めっき硬質クロム層には固体粒子が埋め込まれ得る。クラックのネットワークを有し、そのクラック中に固体粒子が埋め込まれた電気めっき硬質クロム層が、特許文献1および2に記載されている。特に有利な特性は、特許文献3および4に記載されているように、電気分解により堆積された硬質クロム層のクラックに0.25〜0.4μmのサイズのダイヤモンド粒子が埋め込まれることにより達成することが可能である。]
[0004] 電気めっき硬質クロム層は、微細構造を備え得る。特に優れたトライボロジー特性を有する構造化電気めっき硬質クロム層が特許文献5〜8より公知である。構造がカップ状、迷路状、および柱状のうちの少なくともいずれかである硬質クロム層を、特定方法手段としてかかる先行技術により生産の間に使用される電解質の組成および12%の低い電流効率により得ることが可能である。カップ状、迷路状、および柱状のうちの少なくともいずれかの構造は、顕著な滑り特性と非常に優れた緊急作動特性とを与えるが、これは表面構造が優れた潤滑性保持能力により特徴付けられるためである。]
[0005] 上記に挙げたクロム固体粒子層の耐摩耗性、耐焼付性、および耐焼焦性を、構造化硬質クロム層の優れたトライボロジー特性と組み合わせるために、上述の硬質クロム層にクロム固体粒子層が施され、かくして二重層が生産される。このように、構造化硬質クロム層の有利なカップ状、迷路状、および柱状のうちの少なくともいずれかの構造が、構造化硬質クロム層に比べて耐摩耗性がさらに大きなクロム固体粒子層に移され、すなわちクロム固体粒子層に連続され、従ってクロム固体粒子層の非常に高い耐摩耗性を、構造化硬質クロム層のトライボロジーの利点と組み合わせることが可能である。]
[0006] しかしながら、この種の二重コーティングの欠点は、堆積条件と電解質を変更する必要があるために、電解析出プロセスが困難かつ高価であるということであり、機械要素には全体的に比較的厚いコーティングを施さなければならず、上部のクロム固体粒子層の構造は、先に施された構造化硬質クロム層におけるほど顕著ではないことが多い。さらに、二重コーティングは、長い作動期間後、例えば対応してコーティングされたピストンリングの長いエンジン運転期間後に機械要素が擦れると、上部層が腐食され、下に存在する粒子を含まない構造化硬質クロム層の摩耗や焼焦げにつながり得る。]
先行技術

[0007] ドイツ国特許出願出願公開第DE3531410A1
欧州特許出願出願公開EP0217126A1
PCT国際公開第2001/004386A1
欧州特許第EP1114209B1
ドイツ国特許出願出願公開第DE10255853A1
PCT国際公開第2004/050960?A1
ドイツ国特許出願出願公開第DE102004019370A1
PCT国際公開第2005/108648?A2]
発明が解決しようとする課題

[0008] 粒子を埋め込むためのクラック形成方法の手段を構造形成方法の手段と一つの工程にまとめることが不可能だったため、これまでは、構造化クロム層への粒子の埋め込みは不可能であった。]
[0009] したがって、本発明の目的は、先行技術の上記欠点を克服することと、耐摩耗性・耐焼焦げ性が高く、かつ同時に優れたトライボロジー特性および顕著な緊急作動特性を有する、電気めっき硬質クロム層を提供することにある。さらに、本発明の目的は、そのような電気めっき硬質クロム層の生産方法を提供することにある。]
課題を解決するための手段

[0010] 本発明によれば、かかる目的は、固体粒子が埋め込まれたクラックのネットワークを備え、クラック密度が10〜250/mmであり、固体粒子の粒径が0.01〜10μmであり、層全体における固体粒子の割合が1〜30体積%であり、クロム固体粒子層が該層の表面に凹みを備えた微細構造を有し、凹みが占める表面積の割合が5〜80%である、構造化クロム固体粒子層により達成される。]
[0011] 上記目的は、構造化クロム固体粒子層の生産方法であって、
(a)以下を含む電解質中に機械要素を入れる工程、
100g/l〜400g/lの無水クロム酸に相当する量のCr(VI)化合物、
1〜8g/lの硫酸、
5〜18g/lの1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、
0.01〜10μmのサイズの固体粒子、および
0.5g/l未満の無機フッ化物化合物
(b)前記機械要素上に、20〜100A/dm2の電流密度および12%以下の電流
効率で電気分解によりクロム含有層を堆積させる工程、次に、
(c)電流の向きを反転させ、固体粒子を層の微小クラックに埋め込む工程、および
任意選択で工程(b)と工程(c)を繰り返す工程
からなる方法によりさらに達成される。]
[0012] 驚くべきことに、この方法を用いると、クロム含有層に固体粒子を埋め込むと同時に、かかる層の微細構造を生産することが可能であり、よって得られた層は顕著な耐摩耗性と、非常に高い焼焦げ抵抗値と、顕著なトライボロジー特性と、緊急作動性とを有する。]
図面の簡単な説明

[0013] 本発明による構造化クロム固体粒子層の走査型電子顕微鏡写真。
本発明による構造化クロム固体粒子層の走査型電子顕微鏡写真。
本発明による構造化クロム固体粒子層の走査型電子顕微鏡写真。
本発明による構造化クロム固体粒子層の走査型電子顕微鏡スライド写真。層中のクラックのネットワークを目で見えるようにするため、構造化クロム固体粒子層の表面を磨いた。
本発明による構造化クロム固体粒子層の走査型電子顕微鏡スライド写真。層中のクラックのネットワークを目で見えるようにするため、構造化クロム固体粒子層の表面を磨いた。]
実施例

[0014] 「機械要素」は、本発明の意味では、構造化クロム固体粒子層が設けられた任意の種類の機械要素を意味する。機械要素は金属の機械要素であっても非金属の機械要素であってもよい。構造化クロム固体粒子層が非金属物の上に形成される場合、非金属物は先ず、薄い金属膜を施すことにより電気伝導性にされる。本発明のコーティングは、多数の機械要素をコーティングするために、特には機械的摩耗、特に摩擦による摩耗に曝される機械部品、例えば、ピストンリング、シリンダ、ピストン、ピン、カムシャフト、シール、複合材料、バルブ、ベアリング、圧力シリンダ、およびエンボシングロールをコーティングするために使用することが可能である。ピストンリング、シリンダおよび内燃エンジン用のピストン、特にはピストンリングが好ましい機械要素である。]
[0015] 構造化クロム固体粒子層を形成するために、機械要素を電解質へ入れ、カソード(陰極)に接続する。直流またはパルス直流(例えば10kHz以下の周波数のパルス直流)を機械要素に加える。本発明によれば、クラックのネットワークと、層の微細構造が、堆積工程(b)で生じる。極性反転工程(c)では、ワークピースをアノード(陽極)に接続し、固体粒子が微小クラックに埋め込まれる結果、微小クラックが広がる。固体粒子は、好ましくは電解質中で懸濁された状態に保持される。これは、電解質の密度を固体粒子の密度に一致させることにより達成することが可能である。さらに、電解質に界面活性剤を加えてもよいが、電解質は好ましくは界面活性剤を含まない。表面の微細構造は極性反転工程にかかわらず保存され、コーティングは、構造化硬質クロム層の有利な特性を、固形物含有クロム層の有利な特性と組み合わせる。工程(b)および(c)が繰り返される場合、クラックは後続の堆積工程で密閉され、微小クラックのあるクロム層のさらなる層が堆積され、かかる層のクラックが再び拡張され、粒子で充填される。]
[0016] 「電解質」は、本発明の意味では、電解質成分のイオンへの電離によって導電率が生じる水溶液を意味する。従って、上記に挙げた成分と、任意選択のさらなる存在する追加物に加えて、電解質は残りとして水を有する。]
[0017] 電解質の個々の成分の上述の量につき、電解質について言及する。本発明によれば、Cr(VI)化合物が使用される。三価Cr電解質から形成されたクロム層と異なり、Cr(VI)化合物から堆積された電解のクロム層はより多くの格子欠陥を有する。その理由は、クロムが体心立方体であることに加えて、六価クロム電解質から形成されたクロムは電気めっきの間の水素形成に起因する多くの六角形クロム水素化物を含むためである。これは、多数および高密度の格子欠陥につながり、このため堆積されたクロムの硬度がより大きくなる。低い電流効率はこの結果を強化する。CrO3は、クロムの電解析出に特に
好都合であることが分かっており、Cr(VI)化合物として好ましく使用される。]
[0018] 電解質は、好ましくは150g/l〜300g/lの無水クロム酸に相当する量でCr(VI)化合物を含む。電解質が2〜6g/lの硫酸を含む場合、さらに好ましい。電解質は好ましくは、一定量の6〜16g/lの1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸を含む。1〜4個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸が好ましく、とりわけメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンジスルホン酸および/またはエタンジスルホン酸が特に好ましい。メタンスルホン酸が最も好ましい。]
[0019] 本発明の電解質は0.5g/l(1リットル当たりグラム)未満の無機フッ化物化合物を含むが、これはかかる化合物が本発明による層の構造の形成を中断させるためである。
「無機フッ化物化合物」は、本発明の意味では、水性溶媒中で、単純なフッ化物イオン(F-)または複雑なフッ化物イオン(例えばHF2-、BF4-、SiF62-等)へ部分的にまたは完全に解離することが可能なフッ化物化合物を意味し、特に、フッ化塩およびフッ化物含有無機酸(例えばHF、HBF4、H2SiF6ならびにその塩類(例えばMIF、MI
BF4、MI2SiF6、MIIF2、MII(BF4)2、MIISiF6、MIはアルカリイオン(
Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+)を表し、MIIはアルカリ土類イオン(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+)を表す。)が挙げられる。電解質は好ましくは0.25g
/l未満の無機フッ化物化合物、特に好ましくは0.1g/l未満、最も好ましくは0.05g/l未満の無機フッ化物化合物を含む。]
[0020] 電解質はさらに、慣習的な電気分解補助剤およびクロム堆積を支援する触媒を含んでよい。これらは慣習的な量で電解質中に存在し得る。
堆積工程(b)における電流密度は20〜100A/dm2、好ましくは30〜80A
/dm2である。本発明の方法で選択される電流密度が高いほど、構造は密になる。つま
り、構造化クロム固体粒子層の凹部が密になる程、凹部が占めるスペースが多くなる。極性反転工程(c)の間の作動は好ましくは5〜100A/dm2の電流密度、特に好まし
くは20〜80A/dm2の電流密度で起こる。本発明の方法の間、温度は45〜95℃
、好ましくは50〜90℃、特に好ましくは60〜80℃であってよい。]
[0021] 堆積の持続時間は、構造化クロム固体粒子層の所望厚さに応じて選択される。電流密度と電流効率が高いほど、堆積の持続時間がより長いほど、そして工程(b)および(c)がより多くの回数繰り返されるほど、層はより厚くなる。堆積工程(b)は好ましくは5〜240分行われる。極性反転工程(c)は、工程(c)における電流密度および望まれるクラック幅に応じて、有利には5〜600s(秒)実行される。依存する600のs(秒)。極性反転工程は、好ましくは10〜300s、特に好ましくは30〜90s間行われる。]
[0022] 本発明の方法のさらに重要な方法パラメータは電流効率である。電解析出中、一般に、使用された電流量の一部のみが金属堆積に投入され、残りの電流量は損失に至り、主に水素が生産される。「カソード電流効率」とは、効率の程度とも称されるが、使用された全電流量に対する、金属堆積に結びつく電流量の比を意味する。例えば100Ahが使用され、そのうち25Ahが金属堆積に結びつき、75Ahが損失として存在する場合、カソード電流効率は25%である。]
[0023] 電流効率は、高い効率を達成するために、先行技術では一般にできるだけ高い電流効率に最適化されている。先行技術では、電解クロム層の堆積中の電流効率は通常約15%を超え、20%を超える場合さえもしばしばある。本発明の方法では、これに反して、本発明による層の構造形成には、より低い電流効率が必要であることが判明した。]
[0024] 本発明によれば、カソード電流効率は12%以下である。電流効率がそれより高いと、硬質クロム層の所望の構造が得られない。本発明の方法の電流効率は好ましくは8〜12%である。]
[0025] クロム固体粒子層はそれ自体、堆積工程(b)と極性反転工程(c)の繰り返しにより連続的に施されたいくつかの層から成ってもよい。いくつかの層が施され、粒子が個々の層のクラックへ導入される場合、その厚み全体とその表面全体の両方に関し、コーティング中の固体粒子のより良い分布を有するコーティングを得ることが可能であり、クラックは同じ箇所に必ずしも形成されるとは限らない。]
[0026] 本発明の層中のクラックの分布と、それゆえ固体粒子とをできるだけ一様にするために
、意図した使用および所望の構造化クロム固体粒子層の厚さに依存して、1〜100反復、工程(b)および(c)が繰り返される。すなわち、2〜101サイクルの工程(b)および(c)が好ましいことが判明した。意図した使用に依存して、構造化クロム固体粒子層全体は約20〜800μmの層厚さを有する。30〜500μmの層厚さが好ましく、50〜300μmのの層厚さが特に好ましい。]
[0027] 本発明の方法の好ましい実施形態では、方法は、最後の極性反転工程(c)で拡大され、固体粒子を充填した微小クラックを再密閉し、かつ固体粒子を固定するために、クロムを電解析出する工程で終わる。工程(c)の後の方法の最後に工程(b)がさらに繰り返されることが特に好ましい。構造化クロム固体粒子層の生産方法は、以下の工程を含む:
(a)以下を含む電解質中に機械要素を入れる工程、
100g/l〜400g/lの無水クロム酸に相当する量のCr(VI)化合物、
1〜8g/lの硫酸、
5〜18g/lの1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、
0.01〜10μmのサイズの固体粒子、および
0.5g/l未満の無機フッ化物化合物
(b)前記機械要素上に、20〜100A/dm2の電流密度および12%以下の電流
効率で電気分解によりクロム含有層を堆積させる工程、次に
(c)電流の向きを反転させ、固体粒子を層の微小クラックに埋め込む工程、
任意選択で工程(b)と工程(c)を繰り返す工程、および
工程(b)を繰り返す工程。]
[0028] 上述したように、クロムめっきされる加工対象物であるワークピースは、電気分解中にカソード接続される。堆積工程(b)中にカソードで水素が形成され、金属堆積が起こり、Cr(VI)がCr(III)へ還元される。アノードでは再び酸素が生じ、Cr(III)のCr(VI)への酸化が起こる。このCr(III)のCr(VI)への酸化は、アノードのPbO2表面層で起こり、方法の一連のパラメータ(特には電解質の組成お
よび濃度、電流密度、およびアノード対カソード(ワークピース)の表面積比)に依存して特定のCr(III)/Cr(VI)比が生ずる。例えば、他に変化がない条件では、アノードがより大きな表面積を有するほどCr(III)含量はより小さくなる。クロムめっき電解質は、一般に、数回使用される。新たに調製した電解質で方法の初めに特定のCr(III)含量を直ちに得るために、還元剤(例えばショ糖)を電解質に加えてもよい。]
[0029] 本発明の方法は、電解質が4〜16g/lのCr2O3に相当する量のCr(III)を含む場合に、ワークピース上に構造化クロム固体粒子層を迅速かつ一様に堆積させるのに特に好都合であることが判明した。かかるプロセスは全体としてより安定である。電解質は特に好ましくは、8〜12g/lのCr2O3。に相当する量のCr(III)を含む。]
[0030] 高い耐摩耗性を達成するために、固体粒子として好ましくは硬質材料粒子が使用される。「硬質材料粒子」は、本発明の意味では、9以上のモース硬度を有する材料の粒子を意味する。とりわけ、9.2〜10のモース硬度を有する硬質材料粒子が好ましく、9.4〜10のモース硬度を有する硬質材料粒子が特に好ましい。モース硬度は、先行技術で公知のモース硬度試験により決定される。]
[0031] 好ましい硬質材料粒子は、炭化タングステン、炭化クロム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、立方晶窒化硼素および/またはダイヤモンドを含むものである。]
[0032] 本発明の方法で電解質に含まれる固体粒子の量は、広い範囲内で変更することが可能で
ある。0.1〜200g/lの固体粒子が電解質に含まれると有利であることが判明した。特に好ましくは0.5〜50g/lの固体粒子、最も好ましくは1〜20g/lの固体粒子が電解質に含まれる。]
[0033] 固体粒子の粒径は0.01〜10μmの範囲、好ましくは0.01〜8μmの範囲である。0.1〜5μmの範囲の粒径を有する固体粒子が特に好ましく、粒径は0.25〜2μmが最も好ましい。電解質に含まれる固体粒子のうち、好ましくは90%よりも大きく、より好ましくは95%よりも大きい割合が、上述の指定範囲内に存在する。]
[0034] 方法の工程(c)で生じるクラックの隙間の幅は、上記粒径よりも大きくあるべきであり、好ましくは0.02μmよりも大きく、特に好ましくは0.05μmよりも大きく、最も好ましくは0.1μmよりも大きい。]
[0035] 固体粒子としては、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、および/または窒化ケイ素粒子を使用することが特に好ましい。ダイヤモンド粒子の好ましいサイズは0.25〜0.45μmである。酸化アルミニウムと窒化ケイ素粒子の好ましいサイズは0.1〜5μmである。]
[0036] 埋め込まれたダイヤモンド粒子は、例えばピストンリングで生じるような高い熱負荷応力で、特に優れた滑り特性につながるという利点を有する。ダイヤモンドは高温では黒鉛へ変化し、高圧と不十分な潤滑とが同時に起こった場合、例えばピストンリングの接触面の温度は焼焦げが生じる程度に高くなる場合がある。かかる条件下で、ダイヤモンド粒子は黒鉛に有利に変化し、潤滑の務めを引き継ぎ、したがって焼焦げを防止する。微細構造に起因する、潤滑が不十分な場合の優れた緊急作動特性に加え、このように、追加の緊急作動特性が約700℃以上の高温で達成される。]
[0037] 埋め込まれたダイヤモンド粒子は、単結晶および/または多結晶ダイヤモンドから形成することが可能である。より優れた結果は多結晶ダイヤモンドでしばしば達成されるが、これは、結晶が種々多様であるために、多結晶ダイヤモンドが多くの滑り面を有するためである。種々の種類および/またはサイズの固体粒子または硬質材料粒子の混合物も、固体粒子または硬質材料粒子として使用することが可能である。]
[0038] さらに、クロム固体粒子層のクラックは、固体潤滑粒子、延性を増加させる固体粒子、および/または腐食安定性を増加させる固体粒子を含んでよい。固体材料粒子に加えてさらに粒子を埋め込むことにより、層はそれぞれの用途にさらに適合させることが可能である。したがって、例えば、六方晶窒化ホウ素、黒鉛および/またはポリマー粒子(特にポリエチレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンのポリマー粒子)を、固体潤滑粒子としてクラックへ導入することが可能である。スズ、チタンまたはアルミニウム缶の延性金属または合金を、延性を増加させるために埋め込んでもよい。]
[0039] 「構造化クロム固体粒子層」は、本発明の意味では、純粋なクロムおよび固体粒子の層だけでなく、クロム合金の層、特にモリブデン、バナジウムおよびジルコニウムとの合金の層も意味する。よって、本発明は構造化クロム合金固体粒子層にも関する。構造化クロム固体粒子層が、純粋なクロムからではなく合金から形成される場合、合金元素は塩としてクロムめっき電解質中に溶解され、クロム合金の形でクロムと共に電気めっきされる。合金元素はクロム層中に好ましくは0.1〜30重量%の量(重量パーセント)、特に好ましくは0.5〜15重量%の量で存在する。純粋なクロム層と比較して、そのような層は耐摩耗性が大きい場合が多い。]
[0040] 好ましい実施形態では、固体粒子を含むと共に構造化されたクロム/モリブデン合金層
、クロム/バナジウム合金層および/またはクロム/ジルコニウム合金層を生産するために、密なカソード膜を形成する10g/l〜200g/lの少なくとも1つの化合物が追加化合物として電解質に含まれてもよく、かかる化合物は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アルカリ、モリブデン酸アルカリ土類、バナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸アルカリ、バナジウム酸アルカリ土類、ジルコニウム酸アンモニウム、ジルコニウム酸アルカリおよびジルコニウム酸アルカリ土類から選択される。Li+、Na+およびK+をアルカリイオンとして使用することが可能である。アルカリ土類イオンの例はMg2+
およびCa2+である。WO2004/050960に述べられているように、上記列挙された成分は電解析出中に密なカソード膜を形成する。特に好ましい実施形態では、成分は(NH4)6Mo7O24・4H2Oであり、これは構造化クロム固体粒子層の構成に特に好都合である。]
[0041] モリブデン、バナジウムまたはジルコニウムとの合金ではないクロム固体粒子層が生産される場合、電解質は好ましくは、密なカソード膜を形成する上記に列挙した化合物をいずれも含まない。さらに好ましい実施形態では、電解質は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アルカリ、モリブデン酸アルカリ土類、バナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸アルカリ、バナジウム酸アルカリ土類、ジルコニウム酸アンモニウム、ジルコニウム酸アルカリおよびジルコニウム酸アルカリ土類から選択された化合物を含まない。]
[0042] 構造化クロム固体粒子層が少なくとも2層から成る場合、個々の層は異なるレベルまたは完全に異なる成分で合金成分を有してもよい。これは、コーティングされる層または機械要素によって満たされるべき要件に依存して適切に選択され得る。]
[0043] 少なくとも2つのクロム層が異なる結晶構造を有するように構造化クロム固体粒子層が形成される場合、層の固有強度はさらに改良され得る。クロムは、硬質クロムの少なくとも1つの層を生成するため、カソード接続している機械要素にて電解質から堆積され、その結果、異なる結晶化形式を備えた硬質クロムのいくつかの層が電流密度に対応してクロム層に堆積される。層の各相を堆積させた後、機械要素はアノード接続され、その結果、硬質クロム中のクラックのネットワークが拡大し、固体粒子で充填される。好ましくは、異なる結晶構造の層が、交互に重ねて堆積される。]
[0044] 本発明は、上述の方法により得られる構造化クロム固体粒子層にも関する。
本発明の構造化クロム固体粒子層は、固体粒子がクラックに埋め込まれたクラックのネットワークを備え、クラック密度は10〜250/mmであり、固体粒子層の粒径が0.01〜10μmの範囲であり、層全体における固体粒子の割合が1〜30体積%であり、クロム固体粒子層が層の表面に凹部を備えた微細構造を有し、前記凹部が占める表面積の割合が5〜80%である。]
[0045] 「微細構造」は、本発明の意味では、μmの範囲で存在する顕微鏡で観察される構造である。表面は突出領域(表面の荷重支持部分)と陥没領域(凹部、トラフ)を有する。複数の球体が互いに進入している球状構造を有する先行技術から知られている他の構造とは異なり、本発明の層の構造は、複数の孤立した凹部を有する構造として言い換えることが可能である。凹部は好ましくはカップ状、迷路状、および柱状のうちの少なくともいずれかに設計されている。この微細構造は特に耐摩耗性、耐焼焦げ性、および耐腐食性を有することが分かっており、また表面の顕著な潤滑性保持能力を示し、そのため顕著な特性および緊急作動性がある。表面の潤滑性保持能力は、層のクラックのネットワークによってではなく、何らかの潤滑剤が固着された凹部における特定の微細構造により本質的に引き起こされているが、これは、本方法の間にクラックが密封され、潤滑剤を吸収しないかほんの少量の潤滑剤しか吸収しないためであり得る。]
[0046] 本発明の層が高い耐摩耗性と耐焼焦げ性を達成するために、クロム固体粒子層中の1〜30体積%の固体粒子の割合が好ましいことが判明した。好ましくは、クロム固体粒子層中の固体粒子の割合は1〜20体積%、特に好ましくは、全クロム固体粒子層の体積に対して2〜10体積%である。]
[0047] また、クラック密度が10〜250/mmである場合に、本発明の層で固体粒子の有利な分布が達成されたため、好ましいことが判明した。クラック密度は、1mmの線で平均で切断されるクラックの数である。30〜200/mmのクラック密度が特に好ましく、50〜100/mmのクラック密度が最も好ましい。クラックのネットワークは、好ましくは本発明のクロム固体粒子層全体にわたって延びる。]
[0048] 凹部が占める表面積の割合は、本発明によれば、5〜80%である。凹部が占める表面積の割合は、表面積合計に対する凹部から成る表面の割合を決定することにより、本発明の層の表面の平面図(図1〜3参照)で確認される。凹部が占める表面積の割合が10〜70%、特には15〜60%である微細構造が、特に好ましいと判明した。凹部が占める表面積の割合の増加は、表面積の単位表面当たりの個々の凹部を多数にすることから、または個々の凹部がより大きなスペースを占めるようにすることから、または凹部を結合させることから生じさせることが可能である。図1に見られるように、迷路状の構造は、互いに結合させた凹部から生じる。表面積の合計は、凹部の表面積と、支持面積(表面の荷重支持部分)の表面積との合計である。表面の荷重支持部分は従って20〜95%、好ましくは30〜90%、特に好ましくは40〜85%である。] 図1 図2 図3
[0049] 本発明のクロム固体粒子層は、マイクロ範囲の構造を有している。本発明の層が平均3〜100の凹部をし、表面積1平方ミリメートル(mm2)当たりのその最大延長部が3
0μmを超える場合に、有利であることが判明した。凹部の最大延長部は凹部を端から端まで測定した場合の凹部の最大サイズであり、凹部の端は突出領域から陥没領域(凹部)までの遷移部である。この遷移部は、図1−3に明るい色で見ることが可能である。例えば幅が10μmで長さが40μmの凹部は、30μmを超える最大延長部を備えた凹部の上記定義に入るだろうが、幅が20μmで長さが20μmの凹部はこの定義には入らないだろう。図3に示されるように、迷路構造の場合、最大延長部は、迷路の凹部の一端からもう一方の端まで直線上で測定される。] 図1 図3
[0050] 好ましくは、30μmを超える最大延長部を有する凹部の平均数は、5〜90/mm2
表面積、特に好ましくは8〜80/mm2表面積、最も好ましくは12〜60/mm2表面積である。さらに、構造化クロム固体粒子層の表面積全体に対する30μmを超える最大延長部を有する凹部が占める表面積の割合は、5−80%であることが好ましい。30μmを超える最大延長部を有する凹部が占める表面積の割合は、特に好ましくは10〜70%、特には15〜60%である。30μmを超える最大延長部を有する凹部の深さは、好ましくは3μmよりも大きく、特に好ましくは5μmよりも大きく、最も好ましくは10μmよりも大きい。]
[0051] 好ましい実施形態では、隣接する凹部間の平均最小距離は10〜150μmである。「隣接する凹部間の平均最小距離」は、隣接する凹部の間の最小距離の平均値を意味する。距離は、1つの凹部の端から次の凹部の端までの切片である。]
[0052] 本発明の層のクラックのネットワークは微小クラックから成り、それにより、本発明の意味では、nmからμmの範囲の顕微鏡観察されるクラックを意味し、特には隙間の間隔が約0.01〜20μmの範囲で存在するクラックを意味する。]
[0053] クラックの表面積の割合も、本発明の層の電気分解または化学エッチングにより確認す
ることが可能である。しかしながら、表面積の割合はエッチングプロセスの強度および持続時間に依存するため、クラック表面積の割合は広い範囲内で変わる場合があり、一般に2〜30%である。]
[0054] さらに、本発明の構造化クロム固体粒子層に関しては、本発明の方法に関して上述した適切な構造化クロム固体粒子層、好ましい構造化クロム固体粒子層、および特に好ましい構造化クロム固体粒子層が、同様に適切、好ましい、および特に好ましいものとなる。]
[0055] 本発明はまた、構造化クロム固体粒子層が表面に施された、コーティングされた機械要素、特にピストンリングにも関する。コーティングされた機械要素に関しては、本発明の上述の適切な機械要素、好ましい機械要素、および特に好ましい機械要素が、同様に適切、好ましい、および特に好ましいものとなる。本発明のコーティングされた機械要素は、本発明の構造化クロム固体粒子層に関して上述された利点を有する。]
[0056] 本発明の構造化クロム固体粒子層は、機械要素に直接施されてもよいし、または予め機械要素に施された1または複数の層に施されてもよい。
「表面または層に施される層」は、本発明の意味では、表面または層に直接施される層と、暫定的な層に施される層との両方を意味する。層Aに施される層Cは、層構造A、Cおよび層状構造A、B、Cで存在し、Bは中間層であり、Aは機械要素に面する層である。]
[0057] 例えば、慣習的なクロム層、構造化硬質クロム層(固体粒子がない)または非構造化クロム固体粒子層を、本発明の構造化クロム固体粒子層の下に見出すことが可能である。例えばWO2004/050960A1またはWO2005/108648A2に記載されている構造化硬質クロム層を構造化クロム固体粒子層として施し、EP0217126A1またはWO2001/004386A1に記載されている層を非構造化クロム固体層として施すことが可能である。]
[0058] 本発明の構造化クロム固体粒子層上に、1または複数の層を施すことが可能である。上述の層がこれに関して考慮され、特に粒子を含まない構造化硬質クロム層および非構造化クロム固体粒子層が考慮される。]
[0059] 機械要素の慣らし運転をより容易にする慣らし運転層を、本発明の構造化クロム固体粒子層に施すことが可能である。これはピストンリングに本発明の層を使用する場合に特に望ましい。その理由は、ピストンリングの慣らし運転位相が短縮可能であり、エンジンの慣らし運転中の燃料オイルの消費量およびガス放出が減少されるためである。]
[0060] 特に好ましい慣らし運転層はPVD層とCVD層である。
「PVD層」は、本発明の意味では、機械要素に対しPVD(物理蒸着法)により堆積させられた層を意味する。PVD法はそれ自体当業者に周知である。基本的な層材料が、大半は約1−1000Paの減圧下で、レーザ、イオンまたは電子ビームにより、もしくはアーク放電により蒸発させられ、気化され、PDV層が材料蒸気の凝縮により基板上に形成される。必要ならば適切なプロセスガスも加えることが可能である。]
[0061] 「CVD層」は、本発明の意味では、機械要素に対しCVD(化学蒸着法)により堆積させられた層を意味する。CVD法はそれ自体当業者に周知である。CVD法により、気相の固体が化学反応によって基板の加熱された表面に堆積される。一般に、CVD法も約1−1000Paの減圧下で行われる。]
[0062] 本発明によれば、PVD法またはCVD法により得られるコーティングはすべてPVD
層またはCVD層として適切である。好ましいPVD層またはCVD層はDLC(ダイヤモンド様カーボン)層である。これらは、炭素含有ガスからPVD法またはCVD法により堆積可能な無定形炭素層である。これらはPVD法またはPECVD(プラズマ増強化学蒸着法)法により特に堆積可能である。より好ましくは、PVD層またはCVD層は、チタン窒化物化合物またはクロム窒化物化合物を含み、特には式TiNxの窒化チタン、
式TiNxAyのチタン窒化物化合物、式CrNxの窒化クロム、および式CrNxAyのク
ロム窒化物化合物であり、Aは炭素(C)、ホウ素(B)、酸素(O)、および/または、例えばシリコン(Si)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)等の硬質材料形成元素であり、式中、xおよびyは互いに独立して0.1〜1.5である。好ましくはxとyは互いに独立して0.3〜1.2であり、特に好ましくは0.5〜1である。例えば、窒化チタン(TiNx)、チタン炭素窒化物(TiCyNx)、酸化チタン窒化物(TiOyNx
)、チタン窒化アルミニウム(TiAlyNx)、窒化クロム(CrNx)、クロム炭素窒
化物(CrCyNx)、酸化クロム窒化物(CrOyNx)、クロム窒化アルミニウム(CrAlyNx)または多元素化合物、例えば、クロムアルミニウムシリコン窒化物、クロムアルミニウムジルコニウム窒化物、クロムアルミニウムシリコンジルコニウム窒化物を使用することが可能であり、詳しくはCrAlaSibNx、CrAlaZrbNxまたはCrAlaSibZrcNxの式のものであり、式中、a、b、cおよびxは互いに独立して0.1
〜1.5であり、好ましくは0.1〜1.2、特に好ましくは0.2〜1である。本発明の多層配列では、上記のさらなる元素を含み得るクロム窒化物化合物がPVD層またはCVD層として特に好ましく使用される。PVD層またはCVD層は上記に挙げた化合物から成ることが特に好ましい。]
[0063] PVD層またはCVD層の層厚さは好ましくは5〜80μmであり、特に好ましくは5〜60μm、さらにより好ましくは5〜40μm、最も好ましくは10〜30μmである。P構造化層にVD層またはCVD層が施されると、本発明の意味ではこれはPVD層またはCVD層を意味するが、下に位置する構造化層の凹部を完全にまたは部分的に満たすと共に、プロセスにおいて上にある構造化層を完全にまたは部分的にカバーする堆積PVDまたはCVD材料、または完全なカバーという意味では連続する層を形成せずに下に位置する構造化層の凹部を完全にまたは部分的に満たすのみの堆積PVDまたはCVD材料を意味する。層厚さは、最後に挙げられた場合、凹部の充填レベルからの平均値である。]
[0064] 本発明の構造化クロム固体粒子層とその上の慣らし運転層とを備えた少なくとも2層からなるコーティングが特に好ましい。
そのような2層コーティングの慣らし運転後、構造化クロム固体、固体粒子層および構造の凹部に残っている慣らし運転層の上昇から表面が形成され、したがって慣らし運転層の特に有利な特性が達成される。]
[0065] 上記に挙げ、さらに以下に説明される特徴は、本発明の範囲を逸脱せずに、任意の組み合わせで使用可能であるのみならず、ほかの組み合わせや単独でも使用可能であることが理解される。]
[0066] 以下の実施例は発明を示す。
実施例1:
以下の基本組成のクロム電解質を生産する:
無水クロム酸200g/l
硫酸3.0g/l
メタンスルホン酸9.5g/l
ダイヤモンド粒子50g/l(多結晶、0.25〜0.40μmのサイズ)
ピストンリングを慣習的な前処理後、電解質に浸漬し、70℃で以下の電流プログラム
に供する:
工程1 1分 100A/dm2(カソード接続)
工程2 20分 70A/dm2(カソード接続)
工程3 1分 60A/dm2(アノード接続)
工程4 5分 100A/dm2(カソード接続)
電流効率は工程1および4で11%、工程2で9.5%である。Cr(III)含量は10g/lのCr2O3に相当する。工程2および3を5回繰り返す。
実施例2:
以下の基本組成のクロム電解質を生産する:
無水クロム酸 300g/l
硫酸 6.0g/l
メタンスルホン酸 14g/l
ダイヤモンド粒子 50g/l(多結晶、0.25〜0.40μmのサイズ)
慣習的な前処理後、ピストンリングを電解質に浸漬し、70℃で以下の電流プログラムに供する:
工程1 40分 40A/dm2(カソード接続)
工程2 3分 15A/dm2(アノード接続)
工程3 40分 40A/dm2(カソード接続)
工程1および3の電流効率は8%である。Cr(III)含量は9g/lのCr2O3に相当する。工程1および2を5回繰り返す。
比較例1:
WO2004/050960A1に従った構造化硬質クロム層の生産。]
[0067] 以下の組成のクロム電解質を生産する:
無水クロム酸CrO3 250g/l
硫酸H2SO4 2.5g/l
メタンスルホン酸4g/l
(NH4)6Mo7O24・4H2O 100g/l
ピストンリングを慣習的な前処理後、電解質へ導入し、30分間、40A/dm2、5
5℃にて8.5%のカソード電流効率でコーティングする。]
[0068] ピストンリングは上記処理後に構造化クロム層を有する。このクロム層は突出する表面領域(荷重支持領域)に光沢を有し、茶色のカソード膜が構造の凹部に位置する。
比較例2:
WO2001/004386A1に従った非構造化クロムダイヤモンド層を備えたコーティング。]
[0069] ピストンリングを、以下の成分を含むクラック形成電解質へ導入する:
250g/l CrO3クロム酸
1.5g/l H2SO4硫酸
10g/l K2SiF6ヘキサフルオロケイ酸カリウム
0.2〜0.4μmの平均粒度を有する50g/lの単結晶ダイヤモンド粒子を攪拌により上記電解質に分散し、クロムめっきの間、懸濁状態に保持する。クロムめっきは60℃の温度で起こる。先ず、クロムめっきされるピストンリングを、第1段階でカソード接続し、65A/dm3の電流密度、23%の電流効率で8分間クロムめっきする。第2段
階で、極性を反転し、先に堆積させたクロム層のクラックのネットワークを60A/dm3の電流密度で1分間機械要素のアノード接続により拡大し、ダイヤモンド粒子を充填す
る。このサイクル、すなわち8分間のカソードクロムめっきと1分間のアノードエッチングを、合計5回繰り返す。
比較例3:
クロムダイヤモンド粒子層が上に配置された構造化硬質クロム層
比較例1に記載の上記手順に従い、ピストンリングに先ず構造化硬質クロム層を設け、次に、比較例2に記載の上記手順に従い、非構造化クロムダイヤモンド粒子層を設ける。クロムダイヤモンド粒子層は一部、下に位置する硬質クロム層の構造をとる。]
[0070] その後、対応してコーティングされたピストンリングの耐焼焦げ性、耐摩耗性および滑り特性を決定した。これに関し、ピストンリングを6気筒ターボディーゼルエンジン中で1000時間、モーター試験台上でモーター条件下で全荷重で作動させた。耐焼焦げ性および耐摩耗性はシミュレーション試験機(焼焦げマーク試験装置および摩耗試験装置、いずれもPlint社)の支援にて決定した。滑り特性は、コーティングされたピストンリングの表面のトポロジーに関して評価した。表中、++は非常に良い、+は良い、0は平均を意味する。]
[0071] ]
[0072] 上記の表で理解されるように、実施例1に記載の本発明の構造化クロムダイヤモンド粒子層は、クロムダイヤモンド粒子層の顕著な低摩耗性(つまり非常に優れた耐摩耗性)を示すと共に、構造化硬質クロム層の顕著な耐焼焦げ性および非常に優れた滑り特性も示す。]
权利要求:

請求項1
固体粒子が埋め込まれたクラックのネットワークを備えた構造化クロム固体粒子層であって、クラック密度は10〜250/mmであり、固体粒子層の粒径が0.01〜10μmの範囲であり、層全体における固体粒子の割合が1〜30体積%であり、クロム固体粒子層が層の表面に凹部を備えた微細構造を有し、前記凹部が占める表面積の割合が5〜80%であることを特徴とする構造化クロム固体粒子層。
請求項2
層が表面積1mm2当たり平均3〜100個の凹部を有し、凹部の最大延長部は30μmを超えることを特徴とする請求項1に記載の構造化クロム固体粒子層。
請求項3
30μmを超える最大延長部を有する前記凹部は、全表面積に対して5〜80%の割合を占め、深さが5μmよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の構造化クロム固体粒子層。
請求項4
前記固体粒子は9以上のモース硬度を有する硬質材料からなる粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造化クロム固体粒子層。
請求項5
前記固体粒子は0.25〜0.45μmのサイズのダイヤモンド粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造化クロム固体粒子層。
請求項6
前記表面の微細構造は、カップ状、迷路状、および柱状のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造化クロム固体粒子層。
請求項7
構造化クロム固体粒子層の生産方法であって、(a)以下を含む電解質中に機械要素を入れる工程、100g/l〜400g/lの無水クロム酸に相当する量のCr(VI)化合物、1〜8g/lの硫酸、5〜18g/lの1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、0.01〜10μmのサイズの固体粒子、および0.5g/l未満の無機フッ化物化合物(b)前記機械要素上に、20〜100A/dm2の電流密度および12%以下の電流効率で電気分解によりクロム含有層を堆積させる工程、次に、(c)電流の向きを反転させ、固体粒子を層の微小クラックに埋め込む工程、および任意選択で工程(b)と工程(c)を繰り返す工程からなる方法。
請求項8
方法の最後に、工程(c)の後で工程(b)が繰り返されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
請求項9
電解質が、4〜16g/lのCr2O3に相当する量のCr(III)をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
請求項10
請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法により得られる構造化クロム固体粒子層。
請求項11
請求項1〜6または10のいずれか一項に記載の構造化クロム固体粒子層コーティングが施された表面を備えた機械要素、特にピストンリングであって、該構造化クロム固体粒子層の下に配置された少なくとも1つの層および該構造化クロム固体粒子層の上に配置された少なくとも1つの層のうちの少なくとも一方を任意選択でさらに備えた機械要素、特にピストンリング。
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